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2008/04/03
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【書評】タタ財閥 −躍進インドを牽引する巨大企業グループ− 小島眞著 東洋経済新報社
執筆者: tomonaga (11:13 am)
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インドには財閥があるということを知っている人は多い。その財閥の中でも、名前を挙げて一番最初にくるのが、タタである。もちろん、他にビルラとか、バジャジとか名前は出てきても、実際どの分野でどんな事業をしているのか、よほど勉強している人じゃないとわからない。事業会社が社名に財閥名をつかっていない場合も多いこともあるが、やはり、このタタの知名度が抜群すぎるのだろう。 インドの道を走ったことのある人なら、トラックの後ろにカラフルにペイントされたTATAのロゴを覚えているだろう。お世辞にも最新鋭とはいえないトラックだが、横から見ると少し寸詰まり感のある愛嬌のあるスタイルをして、貨物を満載し、誇らしげにクラクションを鳴らしまくる、あのトラックである。 そのタタが、先月ランドローバーとジャガーを買った。昔植民地支配されていた英国のブランドを、アメリカのFORDからとは言え、手に入れたのだから痛快だろう。この財閥の創業者は、最高級ホテルへの出入りをインド人だからと断られた経験をもとに、現在のボンベイのナンバーワンホテル、タージ・マハル・ホテルを建設している。その後、タタ・スチールは、欧州二位、もとイギリス最大手のブリティッシュスチールの後身である、コーラスグループを2007年1月に買収している。野次馬から観ると、タタはこれで旧宗主国英国に三度勝ったことになる。 この本は、そのタタ財閥の歴史とその経営理念を紹介し、グループの代表的な事業会社を、タタ・コンサルタンシー・サービス(TCS)と、タタ・スチール、タタ・モーターズ、そしてタタ・パワーの4社を上げて紹介している。 その歴史、タタブランドの管理の方法など、きれいにまとまっており、グループ会社の管理、そして、企業倫理の管理方法など、日本企業が学ぶものも多いはず。他民族、多宗教の労働者を抱える巨大財閥の方法は、世界で通じる手法であるだろうから。他方、同族経営という、アジアでは一般に見られる企業統治の方法が、どこまでこの先続けられるのか、その点に筆者は今後のタタ財閥の存続、成功がかかっていると観る。 たしかに、インドでは血を抗えないものと見る人が多く、どんなに無能でも、偉大な創業者の血族であれば、その人を長に仰ぐことに、そう大きなアレルギーはない。しかし、時は今、“グローバリズム”の時代。一族による統治と、資本と経営の分離という二つの論理がそこかしこでぶつかっている時代である。 タタの経営者一族は、パーシー、拝火教の信者たちで、イランにイスラム教が入ってきたときにインドへ逃れた一派である。インドの他宗教への寛容性、そして多様性を語るときにも、よく引き合いにだされるのでご存知の方もいるかもしれない。この創業者一家が持つ、持ち株会社、タタ・サンズは年間160億円を各種の慈善事業に寄付している。 創業者ジャムシェドジーは、祖国インドの独立運動にも多大な貢献をした一人である。鉄が国家であった時代、製鉄所、水力発電所、そして高等理系教育機関の設立の礎を築き、現代のインドの躍進の原動力の核になった。 それから4世代が交代し、現在はラタン・タタという有能な経営者が近年の舵をとり、着実に世界企業として発展している。90年代に入るまでの統制経済時代、その後の自由化による、日欧米の巨大資本の流入を迎えつつ、グローバル企業として発展していく財閥としての過渡期をうまく乗り切っている。 この三つの事実、つまり、慈善事業家であり、インド独立、躍進の功労者であり、かつ、有能な指導者を輩出し続けていることが同族支配をより強固なものにしている。BJP時代に躍進した、リライアンス財閥内での兄弟争いは、タタの結束力、統治力をよりハイライトする結果になった。 そして、株主だけでなく、より広く遠方を見据える経営に期待も大きい。イランから逃れて1000年以上、一族の伝統を守り抜いた生き抜く智慧が、市場、顧客、株主、労働者、そして社会的責任のバランスとり方の難しい現況にて、存分に生かされていることを感じる。ジャムシェドジーの作った製鉄所の青写真には、『ヒンドゥー寺院、モスク、教会用の寺院を確保するように』と書かれている。 昨今、みずほと三菱東京がタタに800億円を融資した。これは前述のジャガー、ランドローバーの買収にかかる資金の一部の模様。(買収総額は2300億円)日本とインド、相互に補完する関係になりつつある今、インドの企業を知る一冊として、タイムリーな出版でした。 願わくば、財閥と政治の関係に、もう少し踏み込んで欲しかった。BJP政権において、リライアンス財閥がタタ財閥をいっきに追い抜いた時代があったが、その後、国民会議派に戻ったら、またタタが追い抜いている。推して知ることはできても、実際に彼ら、財閥のリーダーの口からでてきた言葉を聴きたかった。 |
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